店に立つようになって4日目。
新人にはまだまだ覚えなければいけないことが山ほどあります。
とはいえ、知識ばかりでは何の役にも立たないので、「体で覚えるんだ。」という先輩の指示通り、レジに立つ。どっちかと言うと体育会系なので、ほんとにその通りだと納得。
”人間、本当に追い詰められると命のアンテナが動き出す”というけど、お客さんが来てきちんと対応しようと思ったら大脳皮質がフル回転し始めて、なんとかなるもので、結局それが新人にとっては一番いい。
別に意識して頑張っているわけではないんだけど、回を重ねるごとに声は大きくなってきた。
スタバでは「いらっしゃいませー」とは誰も言わない。
「こんにちは」「こんばんは」でお客様に挨拶する。
そうそう、あいさつでまたカルチャーショックだったのが、バイトに入るときの時間帯に関係なく、その日初めて顔を合わせたときはいつも
「おはようございます」
と言うのだそうだ。最初はみんなわざとやってるのかと思ったんだが、そうでもないらしい。
「おはようございます」と言われたときに半信半疑で「いや、早くないですよ」と微妙なツッコミを入れたら、ボケじゃないよと言ってそのしきたりを教えてもらった。 (へえ×56)
飲食業界ではみんなそうらしい。ほんとにそうなの?
途中で、また新たな仕事に挑戦した。
その名も「サンプル持ち出し接客術」。(勝手に命名)
これは、要するに、試食してもらってそのおいしさを味わってもらい、販売促進して売り上げを伸ばそうというものだ。
スーパーの冷凍食品売り場でウィンナーを配っているおばちゃんと同じあれだ。
それのスターバックス版。
売り込むのは、スタバで今、イチオシの「カフェベロナ」というコーヒー。
コーヒーには本当にたくさん種類があって、そのうちのひとつがベロナ。
このコーヒーは酸味抑え目で、コーヒーだけで飲むとズンっとした存在感の中にちょっとだけ苦みのある大人のコーヒー。
でも、このベロナと一緒にチョコレート系のものを食べると、口の中で溶け合って、チョコレートの味が単なるチョコではなく、ものすごくいい香りで高級感が出てくるのだ。同時にコーヒーの苦さは全く無くなり、その代わりに香ばしい大人の雰囲気が口いっぱいに広がるという、まさしくカフェで手軽に体感できる「1+1=3」の世界なんですわ。
で、そのチョコに当たるのものにガトーショコラを一口に切って、コーヒーも試飲用のカップを持って店頭へ出る。
見知らぬ人に声をかけるのって、全然緊張しない。というか、今持っているサンプルの知識があるから、結構上手くしゃべれるかもという妙な自信があったし、人とコミュニケーションとるのも苦手じゃないから。
そうしているうちに、赤ちゃんを連れた若い夫婦が現れた。
ジャスコの食品売り場の方に用があったようで、お父さんはさっさと済ませたい風だったのだが、奥さんの方がガトーショコラに興味をもってくれて、「行ってみようよ。」とお父さんの手を引っ張ってきてくれた。
さりげなーく、それでいてフレンドリーにプロモーションしていたら、
「このガトーショコラって意外と甘くないのねえ。」
「そうなんですよ!だから一個食べてもあんまり重くないんですよね。ガトーショコラだけお持ち帰りもできるんですけれど、よかったらいかがですか?」
「そうね。じゃぁ帰りに寄るわ。」
奥さんの「後で来る」はニュアンスが遠まわしの拒否ではなかった。そして15分後、本当に来てくれた。
あのガトーショコラを2個、、プラスでコーヒーシフォンケーキも買ってくれた。
ものの10分のプロモで私の時給をはるかに越える商品が売れるなんて。ステキ。
時間と人数があれば、こうやってプロモーションはどんどんやったほうが、売り上げ的にはおいしいらしい。だって、10分で私の時給越えてるんだから、1時間やったら6倍な訳でしょう。(そんなに単純じゃ無いけど。頑張ればできるはず。)
そんなわけで、今日のバイトは全然疲れなかった。というか、めっちゃ楽しかった。