商品のことを知らないということは、決して恥ではない。商売というのは、店の「商品を知っている人」だけを対象にしているわけではないのだ。
だから、知らんときには知らんと言おう。分からん時には分からんと言おう。
というのも、知らないのに知ったフリをするのは、何の特にもならないだけでなく、客に一番あったニーズの商品を提供しようと努力する店側にしてみれば、はっきり言って迷惑なのだ。
ある年輩の夫婦がやってきた。お父さんの方はそそくさと席についてしまって、お母さんだけがレジにやってきた。見るからに何が何やら分からない風な感じだった。
でもそれはそれでいい。スタバのことをよく知らない人は、メニュー表を見てもチンプンカンプンなのはよく分かる。それに、そういう人に対しては、「何が分からないかを発見すること」「こちらから相手にオススメすること」「分かりやすい選択肢を提示して希望通りのドリンク注文を受けること」など、いろんな観点から研修をきちんと受けているから、全く以って想定の範囲内。
でも、このお母さんはなんだかすごく焦っているようだった。分からないことを言われるとパニックになるかのように、店員に説明する間を与えまいとするかのようにぶつぶつ言っていた。
「えとね、あの、エスプレッソ。エスプレッソ。うん、なんかそういうのちょうだい。」
エスプレッソと言うのは、エスプレッソマシンで抽出した濃厚なコーヒーをとても小さなカップにほんの1センチほどだけあるコーヒー。カフェラテとかカプチーノなんかは、このエスプレッソにミルクを加えて作るもので、相当なコーヒー通でないとエスプレッソは注文しない。
なのにきっと、このお母さんは、とりあえずこの手のコーヒーショップで「エスプレッソ」といっておけば、何かそれらしいものが出てくるのだと思い込んで、しゃべっていたのだと思う。
結局、ドリンクを出したところで、「ナニコレ?」と言われ、私こんなん飲めんわーとか散々言い始めたので、もう一度レジで説明しなおして結局普通のドリップコーヒーを注文することになった。
こんなこと日常茶飯事、よくあることで、別にいまさらって話なのだけど、今日はこのお母さんがあまりにも「エスプレッソ」と連呼するので、知らないふりしてたほうがこの人にとって本当に飲みたいドリンクが飲めるのになぁ・・・と思った。
店で商品を売るに当たって、プロフェッショナルであるべきことのうちに、「知らない人に知ってもらう」こともあるわけだから、そうなると客としては、「知らない自分に知らせてくれる店(店員)」というのはむしろ当然のものとして、もっと堂々としてるべきだ。そうして知った上で、本当に欲しいものを求めるべきだと思う。